https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2205/12/news112.html
仮想通貨の価格下落が加速している。5月12日、ビットコインはさらに値を下げ一時370万円となった。ドル建てでは、一時3万ドルを割った。1日で8.4%下落した。5月12日昼時点のビットコイン価格(bitFyer)
「ビットコインは苦しい状況にある」とビットバンクの長谷川友哉マーケットアナリスト。米金融政策の舵取りを巡り不透明感が残る中、テラUSD(UST)騒動が火に油を注いでおり、影響はDeFi、NFT、それから他のステーブルコインの安定性にも波及した。仮想通貨市場全体への信用が揺らぐ格好となっていると、長谷川氏は指摘する。
ビットコインは下落しても、前年の安値が底というのが通例だった。しかし、今回は初めてドル建てで前年の安値を割り込んでいいる。「市場のムードは悪化する一方だ」(長谷川氏)
一方で、米国のインフレ対策が効果を発揮すれば、株式市場と併せて仮想通貨にも好影響となる。4月の米消費者物価指数(CPI)は、月次ベースのコアCPI以外は頭打ちの兆しを見せた。FRBの利上げとバランスシート縮小によってインフレが抑制されれれば「リスク選好度が上向き始めるだろう」(長谷川氏)ドル建てビットコイン価格の推移。前年の安値を割り込む展開となっている(Glassnode、ビットバンク提供)
ビットコイン以外のアルトコインはさらに激しい下落に見舞われている。イーサリアムは1日で13.3%下落、リップルは23.3%、ポルカドットは24.5%下落するなど、全面安の様相だ。アルトコインはさらに激しい下落(bitFlyer)
ステーブルコインUSTとDeFiが震源地か
下落の要因の1つといわれるのが、ステーブルコインのテラUSD(UST)急落だ。アルゴリズムで米ドルとペッグ(連動)する仕組みだが、うまく動作せず市場の信頼を失った。USTを発行するプラットフォームのテラ(LUNA)は、24時間で95.9%下落した。テラは95%以上の激しい下落となった。もともと仮想通貨時価総額でトップ10に入る人気コインだったこともあり、周辺への影響も大きい
さらに、USTを担保に他の仮想通貨を借りるDeFi(分散型金融)市場でも衝撃が走った。USTの担保価値が毀損(きそん)すれば、強制売却などが起こりかねず、連鎖的に影響が広がる可能性があるためだ。
DeFi銘柄のアバランチ(AVAX)は24時間で31%の下落、同じくユニスワップ(UNI)は20.5%、チェインリンク(LINK)は22.3%、アーブ(AAVE)は24.9%下落した。
価格の下落と併せて、仮想通貨ビジネスについても逆風が吹き始めている。仮想通貨業界の最大手、米コインベース・グローバルが5月10日に発表した2022年1~3月期決算は、最終損益が4億2900万ドルの赤字に転落した。仮想通貨の相場低迷で、個人投資家の売買が減少したことが要因だ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-12/RBQRMXDWLU6801
ステーブルコインのテラ「何もかもが崩壊」-DeFiの花形から死のスパイラルに
Emily Nicolle2022年5月12日 13:17 JST
- USTを安定的に維持するはずの仕組みがどれも機能せず
- ド・クォン氏、USTの担保増強に向け15億ドル調達目指す
数学とソフトウエアを組み合わせデジタル通貨をドルのように機能させる有名な試みが劇的な形で崩壊しつつあり、その支援者や「DeFi(ディーファイ、分散型金融)」にとってこれまでで最大の試練となっている。
「テラUSD(UST)」はアルゴリズム型ステーブルコインの一つで、コードやトレーダーのインセンティブなどを複雑に組み合わせてドルとの1対1のペッグを維持する設計だ。USTは同じエコシステム内にある暗号資産「ルナ」と双方向で交換可能だ。
USTなどの特徴は、そのデジタル資産エコシステムからの離脱や仲介者への依存、価値変動への懸念を伴わずに暗号資産トレーダーが容易かつ迅速に取引できる点だ。USTのボラティリティー管理ソフトを利用することで、アービトラージ(裁定取引)の機会はさらに大きくなる。要するにUSTは暗号資産の理想だ。
ほんの1カ月前には、ブロックチェーン「テラ」と主要な支援者ド・クォン氏にとって未来は明るく見えた。ルナの担保提供を目的とする組織ルナ・ファウンデーション・ガード(LFG)はUSTのペッグ補強に向けビットコイン15億ドル(約1900億円)強相当を購入した。当時、ルナの価値は過去最高の119ドルだった。
しかし、今月9日にはUSTを安定的に維持するはずの仕組みがどれも機能しなかった。USTは同日に一時60セントまで下げ、11日にはさらに下落して約20セントを付けた。184億ドルに上っていた時価総額は50億ドルに急減。ルナも一時2.35ドルと大幅に下げた。
相場が崩れる前にリスク回避に動いた暗号資産ファンド、ファサナラ・デジタルのパートナー兼責任者のニキタ・ファディーブ氏は「多くの人が不意を突かれた。何もかもが崩壊した。全面降伏だ」と語った。
テラの慎重に設計された仕組みがどれもうまく機能しなかった理由が何かは不明で、陰謀論も渦巻く。ただ確実に言えるのは、ド・クォン氏がこのまま引き下がることはないという点だ。
同氏はUSTの担保増強に向け新規および既存の投資家から15億ドルを調達しようとしている。USTの注文が急にほぼ消えたことから流動性を拡充したい考え。15億ドルでは不十分だとして、USTがドルと再度ペッグされるには数週間とは言わないまでも数日かかる可能性があるとの見方もある。
ブロックチェーン分析会社カイコの調査ディレクター、クレア・メダリー氏は電子メールでUSTについて、再ペッグには1ドルへの上昇に向けトレーダーからの買い注文が希望価格の流動性を全て吸収する必要があるとし、「今朝はほぼ何も残っていなかった」と語った。